2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

あっというま午後

切れ切れの空に、風が強く吹いている。水鳥の、抗議するような鳴き声が、窓を締め切った部屋の中まで聴こえてくる。かつて台風だったものども。彼は若葉を揺らし、雲を走らせ、総武線を停まらせる。せっかくなら月曜日も拐ってくれればよかったのに。 食い散…

きのうのきょう

昨日はやたらと人身事故の多い日だった。久しぶりに遠出したらこれである。或いはこんな頃ともなれば、日に数回の身投げなど当たり前なのかもしれない。 すべての自殺に肯定的でありたいと思う。その手段によって消極的、積極的、多少の揺らぎこそあれど、最…

生来の気性の弛さを五月のせいにするのはいよいよ卑怯なきがする

これ以上過ごしやすい日があるのかというほどの気候だった。少なくとも部屋の中は。 この頃本格的に緊迫しつつある。もちろん金の話だ。今日を生きるのも精一杯、そんな局面に立たされることになるとは十年前の自分は想像だにしなかった。まあ、怠惰と臆病を…

ここではないどこかへ

日射しと衆目に弱い人間は、帽子を買うか自分の部屋に閉じ籠るしかない。帽子が嫌いな僕は土竜になる道を選んだ。そう、選んで採った生き方なのだ。我々のような人間が俗世で生きるのは、それは大変むずかしい。そう思うからこそ我々は世界の隅に別の世界を…

名人的に本を読みたい

読書のなにが面白いの? と野暮な質問をされることがままある。読書家を自称する者ども、というのは積極的に自称しないと他称に至らない程度の“読書家”という意味だが、そうした質問を彼ら(或いは『我々』)にするのは酷と言える。なぜなら「読書のなにが面白…

果物の漢字体はどれもエロい

デュマ・フィス『椿姫』を読む。古典的名作を手に言うことでもない気がするが、俺という人間はつくづく「姫」という単語に弱いらしい。属性としての「姫」はそうでもないから、もっと単純に、つまり「姫」という字が好きなのだろう。「霞」「紫」「宮」「葉…

上書き不能のソフトほど扱いに困るものはない

ロシア語を学びはじめる。新しい言語に学問として敢然と立ち向かうのは中学校の英語以来であるから、もう何年かぶりのことだ。 なぜロシア語かというと、第一に下馬評があった。ロシア語は簡単だぜ、という噂である。じゃあせっかくだしやってみようかという…

詩的散文

トルストイ『クロイツェル・ソナタ』を読む。彼の短編ないし中編を消化しているとき、俺は物語というよりもむしろ随筆に近いなにかに目を通しているような気もちになる。高度に洗練された随筆である。或いはエッセー的であるために高度に洗練されているよう…

快楽動物

五月にしては寒すぎた。 幼児期、多くの人間にとって肛門(前立腺?)は性感帯であるらしい。排泄が快楽だと身体に覚えさせることで体内に毒素を溜め込まないようにするんだとか。それなりに納得の行く話だが、いつ、誰が、どんな風に調査したのかちょっと気に…

ボク女とボク少女

“女”という語は幼女から老婆まで、あまねく女性を内包する。“少女”は“女”のなかでも発育過程の直中にある未成熟(成熟するということがどういうことかは一先ず置いておいて)なものを特別に指す。では、たとえば早川あおいはボク少女だろうか。ボク女だろうか…

遊歩道にて

特に何もすることはなかったので近所の遊歩道へ出た。より正確を期すと、すべきことは多々あったが何もしたくなかったので遊歩道へ逃避した。休日の我が家には俺の居場所など無い。 その遊歩道には、俺が生まれるずっと前から、巨大な桜の木がぽつんと植わっ…

ニート、物を買う

DSソフト『ソラトロボ』(バンダイナムコゲームズ)守月史貴『疾走れ、撃て!』漫画版(MFコミックスalive)TOBI『屋上姫』(FLEX COMIX)尚村透『失楽園』2・3(ガンガンコミックJOKER)以上の品を購入する。 まず『疾走れ、撃て!』に関して。販促の役割を十分…