あっというま午後

切れ切れの空に、風が強く吹いている。水鳥の、抗議するような鳴き声が、窓を締め切った部屋の中まで聴こえてくる。かつて台風だったものども。彼は若葉を揺らし、雲を走らせ、総武線を停まらせる。せっかくなら月曜日も拐ってくれればよかったのに。
食い散らかしたピザみたいな曇天が薄く広がっていて、その間隙からやがて晴れ間が一筋、二筋と覗く。太陽が見えないせいで辺りはほの暗い。それでも窓を開ければ猫の額ほどの青空が、外の風景をむしろポジティブな姿へ変貌させていた。青というのは良い色だ。何となくいい予感を降ろしてくれる。空は人のために青いのかもしれない。紫陽花もそう。傘を差したい日のために。
五月が終わる。終わろうとしている。ということは、俺が知らないだけで世の中はとっくに梅雨入りしてるんだろう。このまま知らないうちに明けてくれれば幸いだ。コンクリートの濡れそぼった臭いが、俺は好きではないから。