小説のなかの老海賊が装着しているような、黒地に髑髏印の眼帯をつけている人に会った。というか、僕の妹だった。この眼帯はね、と僕がまだ何も訊ねないうちから彼女は語りだした。財宝を手に入れた帰りの道で、鯨の化け物に出くわしたんだけど、その時やつの心臓と引き替えに、持って行かれてしまったの。僕は唖然とした。知らない間にそのような血戦が繰り広げられていたなんて。そして同時に、僕は妹をたいへん哀れに思うのだった。
そんな彼女はもう18だ。妹との生活は、僕から女性への偏見と幻想を一切合切捨て去ってくれたという点で、少なくともそれなりの意味と価値があったとおもう。兄としては、なるべく幸福に生きてほしいものだ。