渇きの海には渇いた海月がふらふらと漂っている

秋山瑞人『龍盤七朝 DRAGONBUSTER02』を買う。
濫觴の段階で、これ本当に面白くなんの、大丈夫なの秋山──そう疑ってしまった俺はやっぱり鍛練が足りないのだと思う。渇き具合が生半可だからそんなしょうもない雑念が過るのだ。
作者の前科に知名度、作品の発表時期や舞台その他設定のことを考慮すれば、この物語を好く奴はとっくに押さえてるし好かない奴はどんな風に口説かれても読まない。そういう小説だから、売れ行きという点から続きが出るかどうかを割と切実に心配していた。少なくとも書いてる張本人にまだ続ける気があるということは安心を呼ぶ。二巻で終わらないのもここは素直に吉兆と受け止めるべきなんだろう。
しかし同時に、終わらないということは終われないということでもある。なまじ餌を貰ったばかりに次の餌を期待してしまう。
続きがでないといえば『天槍の下のバシレイス』もとんと音沙汰が無い。『学校を出よう!』、『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』の両作も最後に聞いた噂は三年以上の昔だった気がする──そんなことを言い出したらキリがないのだろうが、こういうことは誰もが抱えているジンクスなので垂れ流しても許されることになっている──。『火目の巫女』だってそう。『死図眼のイタカ』など夢にまで出た。
こうした著書はしばしば海水に喩えられる。これほど簡潔で的を得た物言いがあるだろうか。いっそ劇薬であればいいのにと、俺などは本棚を眺める度思わずにはおれない。