きっとこれから冷えてくる。そんな予感が、秋の日射しを「麗らかな」とは呼ばせない

十月は両手で数えられる程度にしか本を読まなかった。読書の秋とは言うけれど、あっという間に「気づけば暗くなる」この季節は不便に思う。
本を読むなら断然夏だ。暑い日、狭い部屋を閉め切って、そこには空調も本棚すらも無い、生き延びるのに必要なだけの水分のみを持ち込んで、小箱の端、煉瓦のように積んだ書籍を朝から夜までもくもく消費していくのが、俺にとっては一番楽しい。
だから俺はあまり深く考えて読むことをしない。そういう読み方には興味がない。その世界にとって、ただ通過するだけの存在でありたい。そのために、物語の暴力的奔流に翻弄されたいと願う。情報の圧倒的質量に身を任せていたいと強く思う。
なんだかんだいって、夏は好い季節だった。