「おとなになるまでに読んでおきたい二十のライトノベル」
というこっ恥ずかしい題目の覚え書きが本棚の奥から発掘される。ラインナップから察するに、そう昔のものでもないらしい。『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』が入っていて『死図眼のイタカ』入っていないということは、ちょうど三年前のこの頃といったところか。あれから三年? 早いものだ。
しかしこんな如何わしい一覧を作って、俺は一体どうするつもりだったのだろう。なぜライトノベル限定なのだろう。おとなの定義ってなんだろう。今となっては何もかも忘却の彼方だが、ただ一点、このリストをどこかへ発信したという覚えは特に無い。これを不幸中の幸いと呼ぶ。
意外に感じたのは、リスト中に僕っ娘の出てくる作品が数えるほどしかなかったことである。そもそも思い返してみれば、ラノベで出会った僕っ娘自体二十にも満たないではないか。せっかくなのでメモの意味も兼ねて、記憶の限りここに列挙してみる。
『神様のメモ帳』紫苑寺有子
『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』海野藻屑
『推定少女』巣籠カナ
『キノの旅』キノ
『二四〇九階の彼女』ヤク
『きみとぼくの壊れた世界』病院坂黒猫
『B.A.D 繭墨は今日もチョコレートを食べる』繭墨あざか
『シゴフミ』フミカ
『化物語』斧乃木余接
『スプライト・シュピーゲル』雛・イングリット・アデナウアー
『撲殺天使ドクロちゃん』三塚井ドクロ
『涼宮ハルヒの憂鬱』佐々木
『いぬかみっ!』たゆね
『悪魔のミカタ』朝比奈菜々那
『バカとテストと召喚獣』工藤愛子
『れでぃ×ばと!』大地薫
無惨と言えよう。一応好印象な順に並べてみたが、揃いも揃ってまあ優れた知名度を誇る作品ばかりだ。ラノベは絶対数が多いとはいえ、いやだからこそ、ここまで露骨だともう少し頑張ろうという気にすらなってくる。しかし経験上、一定のラインよりマイナーになるとそうそう琴線に触れてくれぬのもまた事実である。当然なかには救いようのないくらいお粗末なものさえあるのである。ここでの「救いようのないくらいお粗末」とは、「なにを言いたいのか/言っているのかわからない」ものを指す。そしてそんなものは、たとえ僕っ娘が出てきたとしてもなるべく読みたくないのである。このようにして、怠惰はまだ見ぬ少女を殺す。