かわいい絶対悪

たとえばルカ・ブライトは悪として描かれた悪、悪の中の悪である。我々は彼が悪であることに何の疑問も差し挟まない。エクスデスも悪である。サカキも、エッグも、ヤーカーラムもウィリアム・スタログも、また同様に悪と言える。これら純然たる悪を、我々は絶対悪と呼ぶ。
「ある意味での正義」や「同情すべき余地」といったものを取り払った悪は、時として崇高な輝きを放つ。故に、この絶対悪というジャンルはしばしば歓迎される。ただ、キリストからへーか、日本鬼子までも萌えキャラと化す日本においてすら、かわいい絶対悪の話はとんと聞かない。少なくとも、俺は見たことがない。デレず媚びず涙を見せず、誰にも頼らず、強いて語らず、時に殺し時に奪い、その絶対的な強さを自らの欲望のためだけに振りかざし、そして幕引きで凄絶な最期を遂げる。そんな美少女がいてもいいと思うのだが。