二十七/失笑は禁じ得ない

今日の出費
食費 なし
雑費 なし
合計 〇円

撮り溜していた『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』を鑑賞。さくらんぼをつまみながら妹と並んで見ていたのだが、最終回、俺が忍び笑いを漏らしさえしたのに対し、彼女はほろほろと泣いていた。似たようなことは以前にもあって、たとえば『アルジャーノンに花束を』でも妹は滂沱の涙に溺れていたような。
涙は感情の最もポピュラーとも言える具現化である。頬に残る涙の跡と号泣のあとでやってくる粘っこい疲労困憊は、自分の心が揺り動かされたというそれ自体感動的な出来事の確かな証となる。俺は作品に触れて涙を流したことが一度もない。泣きたいと思ったことこそあるものの、実際に目を腫らしたことなどはとんと。或いはそういう体質なのかも知れぬ。
泣ける泣けないで作品を評価するのは軽率にすぎるし、そのような人間は軽蔑ないし同情に値する。しかし感動を涙という形でフィードバックできる者が、だから俺は、少し羨ましいとも思うのだ。