嵐の気配に包まれて

一瞬だった。十二秒やそこら。二十秒ということはまずない。
通り雨という。水平面積の極端に狭い雲がもたらす、一過性の集中降雨のことを指す。夏の嵐のことを言うこともあるが、いま俺が遭遇したのと同じものに逢ってしまえば、誰でも別の名前を使いたくなるはずだ。「雨の降りだす瞬間を久しぶりに見た」と書こうとしたところで雨の降り止む瞬間にエンゲージしてしまったときの、この肩透かし感、そしてそれ以上の形容し難い感動といったら!