時事ネタなんてくそくらえ

そういえば源氏物語で俺が最も好きな帖は『雲隠』だった。何かに被れていろいろな源氏をかじって回っていた頃の話だ。今はもう、手に取ろうとも思わない。追憶することもてんで無い。かつてそういう物語があった、とぼんやり意識するだけの存在である。人も死んだらそうなるのだろうか。
翻って、少しだけ『雲隠』の話をする。俺は『雲隠』が好きだし、この巻あってこその源氏だと主張するものである。だから『雲隠』を数の中に入れるか入れないか、などというのは議論することすらちゃんちゃら可笑しい。ところで『雲隠』が好きだと書いたが、より正確を期せば「『雲隠』をやった紫式部」が好きだということになる。であるから、反対に例えばそこへ詩を挟んだ与謝野が俺はどうしても好きになれない。誰かの訃報が流れた途端にツイッター上で乱れ舞う“ご冥福”と、同じ臭いがする気が、
もう少し巧くこじつけられるようになりたいと心底願った夜であった。