キラー・ビィちゃん「ボクが教えてあげよっか。人の殺し方ッてやつ」

明日から新生活が始まる。できるならあまりがんばらずに過ごしてゆきたいものだ。

■今日の僕っ娘
烏丸渡『デウスXマキナ』よりキラー・ビィ。帝国機兵管理局の捜査班に所属する十四歳。自作した第二世代蜂型クロック・ワーカー「バッドエンド」を操る。
まず『薔薇のマリア』などにも言えることだが、僕っ娘なのか男の娘なのか明記されないというのは大変面倒である。いえこの子にはその必要があるんです、とかご心配無くちゃんとはっきりさせた上で完結させますから、とかいうのならそれはそれで納得しよう。しかし何も判明させないまま“一部完結”(二部が始まった例を俺は知らない)とは何事か。烏丸渡はキラー・ビィのためにも必ずや続編を描かなければならないし、編集部はこの作品のことを決して忘れてはならない。続き絶対買うから。アンケート用紙も出すから。だからさ……。
とりあえずここではキラー・ビィを女として扱いたい。実際はスケープゴート先輩やカボチャお化けの発言から男の娘という向きがかなり優勢なのだが、それはそれ。所詮外野の声に過ぎぬ。
さて、ビィにおいてはやはりそのキワモノっぷりが堪らない。彼女もまた野良・違法クロックワーカー(ゼンマイロボ。余談だが、この作品の魅力は尻そしてゼンマイにあると言っても過言ではない。強い拘りと確かな画力によって描き上げられた精緻なゼンマイ仕掛けの数々は必見)を取り締まる帝国機兵管理局の人間のため一応主人公サイドではあるのだが、これが中々の曲者である。主人公マキナ同様目的の為には手段を選ばないタイプで、マキナと同等かそれ以上の自信を持ち、しかも彼女には無い野心の下に行動している。挑発や独断専行は日常茶飯事、時には生身の人間にクロックワーカーをけしかけるという禁忌も犯す過激っ娘キラー・ビィ。マキナとはまた違う意味でとんがっている。
一方、彼女も平時には並大抵に明るく人懐っこいところがある。しかしその人懐っこさにしろ、すべては彼女が思いのまま行動した結果に過ぎない。極めて厳密な意味で「無邪気」である。無邪気だから躊躇いなく初対面の奴にベロチューかますし、躊躇いなく人をぶち殺そうとする。ではグロッギーなのかといえばそうでもない。むしろ、彼女は感情や心といったものの扱いに関してかなり長けていると考えられる。自己を完璧に操った上で、あのようなロールを演じているのだ。参考人に対して「言 え よ」と迫るあの表情は、いくらなんでもただの十四歳がしていい顔じゃないです。
一歩間違えば腹黒電波か無邪気系か。その何れにも属さない絶妙なバランスは烏丸見事の一言である。僕っ娘多しと言えど、ここまでクレバーにぶっ飛んだ僕っ娘にはそうそうお目に掛かれないだろう。警戒色ファッションは伊達ではない。今作が未完に終わるのは実に惜しまれる。