定義すべき多くの僕っ娘

ある多重人格の女がn体ある人格のうち二番目以降としてのみ「僕」を持っている場合、彼女は僕っ娘と呼べるのか? 殊能将之ハサミ男』を再読して、なんとなくそんなことを思った。
これは、基本的には呼べない。ただしある条件を満たした場合のみ僕っ娘と呼べる、というのが俺の結論である。これから先、中身が入れ代わり立ち代わる僕っ娘に出会わないとも限らない。よって念のため、そうした僕っ娘について簡潔に書き留めておこうと思う。

まずこれ以降、この場所での“多重人格者”は、
a.不特定多数の人格がひとつの身体の中に独立して存在していて(或いはそのような描写が成されていて)、
b.それぞれの人格が元来同じ母体を持つ
者のことを指す。具体的には『テイルズ オブ ジ アビス』のアニス・タトリン奏長や『デウスXマキナ』キラー・ビィはaを満たさず、『ぷよぷよ7』のアルル・ナジャ=ダークアルルや『遊☆戯☆王』武藤遊戯=ATMはbを満たさないため、共に多重人格とは呼ばない。
尚、aにいくつか注釈を加えるとアイデンティティが完全に分断されている必要はなく、たとえば記憶や経験の共有については問わないとする。例を挙げると『サガフロンティア』ブルー=ルージュは、少なくとも融合直後の時点では多重人格者と呼べる。
さて、「僕」人格を一つ以上n未満だけ有するn重人格者が僕っ娘となる上で必要な条件だが、俺はそれを二つだけ設定したい。
一つは「『僕』人格に固有の名前が無いこと」。各人格に個別の呼び名がある場合、それぞれは別のキャラクターとして数えるべきである。今一つは、「『僕』人格が身体の主導権を握るターンが存在すること」。主導権が交代されるまでの明確なプロセス・メソッドがあれば良い。
尚「僕」人格が男性寄りであっても構わないが、一つ目の条件を満たさず且つ「僕」人格が男性寄りの場合は彼を僕っ娘として数えない。こういった例外を除き、以上の二点が満たされていれば、ここでは如何に奇天烈な多重人格者でも僕っ娘として扱う。
しかし冷静に考えると、そんなに解離しまくりでしかも都合良く俺の性癖まで撃ち抜いてくれるキャラクターがそういるはずもない。大して意義の無い定義付けであった。